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初めて採用をするあなたへ

初めて採用をするあなたへ

日本での人材採用が簡単だと断言できる人はどのくらいいるだろうか。

今回は、日本で初めて採用をしようとする国外のマネジメント向けにどのようにして日本で採用をし始めるかについてまとめた。

 

結論として、日本での人材採用は他国に比べてユニークであり難しい。その背景をもとに以下のポイントについて一緒に確認してほしい。

 

1)どのように他国と違うのか

2)ビジネス戦略と市場調査に基づいたペルソナの設定の必要性

3)採用チャネルの選択としてダイレクトソーシングと外部ソーサーの利用の必要性

 

 

1)どのように他国と違うのか

モノリンガルとして生涯を過ごせる日本

今日までの日本の経済の規模を見ると、ほとんどの日本人が生涯において日本語だけを使用し人生を終えるのに十分な生活と、それを支える収入を得てきた。

必要に迫られない限り、日常で使用しない外国語を習得することはない環境が続いてきたのだ。

一方で、日本国政府としては国際的な競争力が落ちてきている現状を踏まえ、2019年を移行期として2020年に英語教育が本格開始する。

ただし、その新たな教育を受けた層が見事に英語を操る人材になったとしても、社会にデビューするのは2030年頃以降となりそうだ。

 

有効求人倍率の高さ

「Many job, no candidate」

これは私が日本のマーケットを知らない方へ市場の説明で使う表現であるが、つまるところ求職者よりも人材を探している企業のほうが多く、数値的にみると求職社の方が仕事選びに優位であることになる。

体感としても、多くの企業がどうしたら他の求人よりも自社の求人を選んでもらえるかといったアトラクションに精を出している。

企業側が給与をだしているのだから雇ってあげているというスタンスでは採用は難しいだろう。

 

実際に令和元年12月の数値をみると、有効求人倍率(季節調整値)は1.57倍となっており、また、都道府県別の有効求人倍率をみると東京都が一番高く2.08倍である。

つまり東京では求職者1人に対して2.08件の仕事があるということになる。このデータは厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職、就職の状況をとりまとめ、求人倍率などの指標を作成し、一般職業紹介状況として毎月公表しているものであり、誰でもアクセスできるため定期的に観察していただきたい。

 

また日本国外と比較した場合に、雇用に関する需要と共有について指摘された興味深いデータとして、世界中で人材の需給バランスを指標にした際に最も供給不足とされるのが台湾であり、その次の2位が日本であるというデータがオクスフォードエコノミクスから発行されているGlobal Talent2021にて示されている(参照:レポートのP10)。

 

終身雇用制度の引きずり、和を以て貴しとなす文化

現代の日本人は転職をする。

しかし、多くの外国人あるいは日本人自身までもが日本人は転職をしないと考えている。そこには2つの理由が考えられる。

 

1つ目は、戦後の終身雇用制度の名残から会社に正社員で勤めていれば安心だという、転職をする必要性の無さを引きずっていることがあげられる。

また、2つ目として日本の文化の象徴ともなる言葉に、聖徳太子が604年に制定した十七条憲法の第一条に記した「和を以て貴しとなす」という言葉がある。

意味としては周囲と仲良く争わず協調するのが良いことであり、また、たとえ意見が対立することがあっても歩み寄ることが大切だとしている。

 

つまり、転職によって環境を変えるよりも現状いる場所での改善を尊重しているたのかもしれない。

こういった歴史的、文化的背景から日本人は転職をしないと思われているのだろう。

 

 

 

2)ビジネス戦略と市場調査に基づいたターゲット設定の必要性

 

ここではより人材を採用したい個々の企業に必要なアクションに触れたい。

 

ビジネス戦略の明確化と市場調査

ほとんどの場合が、企業は理由と期待があって日本でのビジネスを展開しているはずだ。貴社が何をどうしたいのかが一番重要であるが、もし既に競合他社が市場にいる場合は、彼らがどんなビジネス戦略で市場に存在するのかに加えて、どんな人員戦略、配置でビジネスをしているかをしっかり調査してほしい。

おのずと彼らが成功している理由あるいは上手くいっていない理由が見え、貴社での戦略にも役立てられるはずだ。

十分な市場調査を自社できない場合はリサーチ会社、コンサルティング会社への依頼も必要になるだろう。

 

採用ターゲットの設定

ビジネス戦略が明確になり、充分な市場調査、競合調査を経た上で採用ターゲットの設定をして欲しい。世の中には細かなペルソナ設定による人材のソーシングやスクリーニングが活発であるが、その中でも採用する企業側に取って最低限これだけは抑えて欲しい3つがこちらだ。

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<環境カルチャーフィット>

例えば、スタートアップではワークフロー等のファンデーションがままならないような環境が想定され、そういったカオス状態でも結果を出すために自発的にアクションを取れる環境適応能力が必要である。

別の例えとして、ある組織では一つの決定をするのにも多くの承認プロセスを取ることがひつようであったりと、スピードが遅い環境をストレスに感じる人材もいるだろう。

環境カルチャーは人材側、企業側両面にとってについて中長期的なエンゲージメントを高めるためには重要である。今一度貴社の状況を文字化してみることをお勧めする。

 

<期待するスキル>

この点についてはできるだけ具体的に書き出してほしい。

例えば、新規営業をやってほしいという大きな期待だけではなく、どの市場にどの期間でどれだけの金額を売り上げられるといったレベルであれば入社後のイメージはつきやすい。製薬業界やその他業界的に保守的であったり制約が多い業界であればその業界の知識やコネクションが無ければ難しいかもしれないが、比較適新しい業界や商材であれば期待するスキルの幅は大きくなるだろう。

 

<給与待遇>

重要なのはビジネス構造上と市場価格のバランスをとることだ。充分な市場調査の上、ビジネス構造上投資できる金額をしっかりと計算し決めてるべきであるが、日本の場合雇用の維持費は政府の管轄する社会保険や各種税金は複雑でその関係からしっかりとした専門家にアドバイスをもらうことをお勧めする。

もし、貴社が採用したい人材ターゲットがコンペティティブな場合、給与を含めた働き方の柔軟性等の待遇が採用オファー受諾の可否に大きく関わってくるだろう。

 

 

3)採用チャネルの選択としてダイレクトソーシングと外部ソーサーの利用の必要性

 

ここでは採用の入り口である人材探しのチャネルについて紹介したい。

現在日本では政府が管轄する公共職業安定所などで無償で人材の紹介を受けることができるが、ここではそれを省き、より複雑化している民間での採用手法についてまとめている。

 

<民間での採用手法分類と費用>

初めて採用をするあなたへ

ダイレクトソーシングでは社内の人事あるいは専門の採用チームが自ら広告塔となり人材の母集団形成から採用をリードする。

一方で外部ソーサーである人材紹介会社ではその母集団形成プロセスを代行し、ある程度要件に見合った人材を見繕い紹介してくれる。しかし、コストの面で外部ソーサーを利用することは直接的に大きな支出となることから、できればダイレクトソーシングで採用を進めていきたいというトレンドが日本でも7年ほど前より起きている。

 

しかし、いくつかの理由から外部ソーサーの存在が重要であるので3つもポイントを述べたい。

 

①人材紹介会社を通じて転職をする人が約15%

とある調査(doda by Persol 自社リサーチ結果/2019年4月実施)では約15%の転職者が人材紹介会社を経由して転職先を決定したと回答している。

具体的には転職経験者6,578人を対象に「直近の転職先を決定した転職手段」のアンケート調査をしたところ43.4%が求人広告媒体経由で次いで15.6%が人材紹介会社経由で転職先を見つけたということだった。

つまり、あなたの採用ターゲットがその15%の層であったり、転職活動は信頼できるヘッドハンター経由でしかしなかったり、という可能性もあるのだ。

 

②専門特化した人材紹介会社の存在

人材紹介会社も多様化しているが、多くが何らかの業界や職種に特化したチームを持っている。

つまり、彼らは日頃よりそのマーケットの最先端に触れているためその瞬間のマッチングを期待できる。

もちろん、大衆向けの人材紹介会社の中には企業からのオーダーを得て初めて母集団形成に動くチームもあるので、そのあたりの期待値は要件会議の中で判断してほしい。

 

あくまで、採用戦略の一つである

忘れられがちであるが、外部ソーサーを使うのは採用戦略の一つである。

マッチングの精度や、時間的制約などの達成等など、よりよい採用をするという観点からいつでも外部ソーサーとの協業は選択肢として持つべきなのである。それでも、いやいやコストがかさむのでということであればその決断はよりよい採用活動が目的なのではなく、コスト削減を目的としたバックオフィス的な戦略の結果である。果たして貴社ではどちらを優先するか考えて欲しい。

 

 

最後に、日本での採用は簡単ではない。

この記事ではその理由や採用チャネルの選択肢を日本の背景を知る前の方にもわかっていただけるようにまとめている。

 

 

採用に関してのご相談などございましたらお気軽にご連絡ください。

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クリスチャンセン洋助 @LinkedIn(株式会社THRILL)

共同著者:清水ゆう子 @LinkedIn

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